2019年末に世界的に感染が広がった新型コロナウイルス感染症。その影響は各種イベントにダメージを与えており、国内外の各種イベントは軒並み中止。国内最大の草レースといわれるテイスト・オブ・ツクバも例外ではなかったが、2020年春は開催中止、2020年秋は無観客試合、そして2021年春は前売り券のみの入場者制限、2021年秋は1日あたり2,000名、と感染状況を見据えながら段階的に制限を解除。このたび全国的に緊急事態宣言やまん延防止等措置がようやく解除されたこともあり、2019年以前と同じく、観客を通常どおり迎え入れての開催となった。
土曜日の午前中こそ雨に祟られ、また事前の天気予報から客足が遠のいてしまった感も否めなかったが、それでも国内随一のレースイベントでもあるテイスト・オブ・ツクバ。土曜日の段階でもコースサイドのスタンドには大勢の観客が並び、日曜日を含めて(正確な観客数はまだ未定だが)多数の観客を迎え入れていた。
さて、テイスト・オブ・ツクバの魅力はというと、過去に本誌で何度も語ってきたことだが観客目線からすると「生産から30~40年経た旧車が全日本ロードレース選手権にすら匹敵するタイムで競い合うハイレベルなレース」であることだ。テイスト・オブ・ツクバ(とその前身となるテイスト・オブ・フリーランス)は基本的に鉄フレーム車同士で競い合うことを旨としてスタートしたレース。なので参戦車も基本的に1970年代の空冷Z系や水冷車でも1980年代のGPZ900R、FZ750、あるいは時代が下ってもXJR1200やFZS1000、ZRX1200Rなどとなっている。そんなマシンが少し前の全日本ロードレース選手権のラップタイムとそん色ない速度で競い合うわけだ。ハイエンドクラスとなるハーキュリーズクラスともなると、そんな旧車たちにNinja H2Rという世界最強クラスの現行車が加わり、さらに参戦ライダーには全日本ロードレース選手権参戦経験者や国際ライダーの名前もチラホラ。場合によっては世界耐久選手権参戦中のライダーが加わり、屈指の実力者たちが極限の世界でバトルを繰り広げるという寸法だ。
HERCULES
それも、全日本ロードレース選手権参戦チームしか入手できないような特殊なレース用パーツを使うのではなく、我々にとっても入手可能で身近なパーツを街のカスタムショップが組み込み、レースに挑んでいる。トータルでは真似できないパッケージであったとしても、部分的には我々のカスタムマシンと大差ないマシンが競い合うわけで、つまり我々のカスタムマシンもサーキットで活躍できる可能性が目の前に広がっている、ということでもある。カスタムする動機は人それぞれだろうが、言い方はともかく「旧車で最新モデルをカモる」ことを夢見ている人は少なくないだろう。その夢が実現している場が、テイスト・オブ・ツクバなのだ。だから旧車ファンだけではなく多くのカスタムファンがテイスト・オブ・ツクバに注目しているのではないだろうか。