2021テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE

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今回は前売り券のみ発売する変則的な方法で観客を入れての開催

日本最大級の草レースを称されることが多い“テイスト・オブ・ツクバ”。2020年は他イベント同様に新型コロナウイルス感染症の影響から、年2回(春、秋)の開催中、春は中止、秋は無観客試合となっていたが、2021年5月は無事に観客を入れての開催となった。

とはいえ新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、今回は前売り券のみの発売とし、観客数を1日あたり1,000名以下に制限。その影響もあってか、おそらくメインステージと位置付けられている日曜日も人の流れは緩やか。来場者が滞留することはなる観客席や各チームのパドック、出展ブースなども、来場者自身も気を付けていたのかそれほどの密は見かけなかった。

2021テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE パドック
写真は日曜日昼ごろのパドックエリア。土曜日参戦チームのテントが撤去されていた関係からパドック内も適度なスペースが生まれ、動きやすくなっていた。観客もパドックに滞留するわけでもなく比較的空いた印象だった

さて、今回初めてテイスト・オブ・ツクバについて触れる人もいるだろうから少しおさらい。先にも触れたように日本最大級の草レースと呼ばれるだけに華やかな存在感を放っている一大レースだ。全国から腕自慢の猛者や実力派カスタムショップ、はては全日本ロードレース選手権JSB1000に参戦中の現役国際レーシングライダーすら参戦していて、かつての全日本ロードレース選手権に匹敵するようなコースレコードすら実現させている高いレベルのレースとしても知られる。しかもそのマシンはファクトリーマシンやスーパースポーツモデルなどではなく、我々が普段から接している市販車、それも鉄フレーム車がベース。空冷Z系やGPZ900R、GSX1100Sカタナ、CB750F、FZ750、ゼファー1100、ZRX1100/1200Rといったマシンが主要メンバーだ。

2021テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE ハーキュリーズクラス参戦マシン
写真はハーキュリーズクラス決勝後に並べられた参戦マシン。XJR、ZRX、GPZ、FZといった、カスタムシーンでおなじみの車名が並ぶ。これはもともと、1990年代からのカスタムシーンで注目された空冷Z系でレースができないかという発想からこのレース(正確には前身のテイスト・オブ・フリーランス)が生まれたため。ゆえにカスタムパーツやチューニングメニューも一部を除いて我々ストリートユーザーと同じなのだ

そういったマシンをバイクショップが一般に市販されているカスタムパーツを使ってカスタムしている。ほとんどの参戦マシンは本誌が過去に掲載してきたカスタムマシンとほぼ同等の内容である。これこそがテイスト・オブ・ツクバがカスタムファンから注目を集めている理由でもある。オーリンズ正立/倒立フロントフォークも他社リヤショックも、ブレンボ4ポットキャリパーもサンスター製ブレーキローターも、マルケジーニ鍛造ホイールもJBパワーマグ鍛もゲイルスピード製ホイールも、ケーヒン/ミクニレーシングキャブレターも、我々が使用しているモノとはごく一部を除いてほぼ同一。つまり『我々のマシンが本気でレースに参戦したら…』という夢の世界がテイスト・オブ・ツクバの見どころだったりするわけだ。

2021テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE リアライズ・道岡代表のZ2
こちらは8日(土)に開催されたモンスタークラスに参戦し、グループAで4位入賞したリアライズ・道岡代表のZ2。パッと見てもストリートで走っているマシンと何ら変わらない内容だ

観客数限定だが往時の華やかさが戻りつつある

筆者が今回のテイスト・オブ・ツクバの取材で現地入りしたのは9日(日)。現在のテイスト・オブ・ツクバは2デイ制になっていて、2021年5月は8日(土)・9日(日)の開催。11月開催予定も土日開催となっていて、おおまかに土曜日は空冷車メインのクラスが、日曜日が水冷車メインのクラスが開催されると考えていいだろう。どちらかというと土曜日が草レース・手作りイベントとしての雰囲気を色濃く残し、日曜日はよりイベントとして華やかな印象だ。これは現在のテイスト・オブ・ツクバのメインイベントとして鉄フレームという制約以外は無差別級の”ハーキュリース”クラスが存在し、そこに現行車としても史上最強レベルのNinja H2R、数々の有名カスタムショップ、著名な国際レーシングライダーたちが多数参戦することがあることも影響するのだろうか。

ともあれ、今回の日曜日は結構な数のブース出展があったことにまず驚いた。そして筑波サーキット中央のフリースペースにもフリーマーケットの出展者や飲食のケータリングサービスの姿も。密を避ける意味でもフリースペース全域を埋めないようにしていたのだろうが、いずれも密を避けつつも盛況なようすが見られた。日曜日は最高気温27度、路面温度も60度を超える真夏日となってしまったが、来場者たちは日陰を探しつつ観戦日和を楽しんでいた。

2021テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE パドックのようす
2021テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE パドックのようす

パドックはチーム事情によって鬼気迫る勢いで整備や点検をしているチームもあるが、おおよそはリラックスムード。マシンを前に食事したり、昼寝したりといった感じも

今回は観客が入るということもあってか多数のブース出展があった。最新カスタムパーツ、カスタムマシンの展示などで来場者にアピール

とはいえ、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、無観客試合となった2020年11月以来、西日本勢の姿は激減。とくに今回は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止として緊急事態宣言が東京都などに発令されていた時期でもある。普通に考えれば仕方がない話でもあるが、一刻も早く西日本勢も、さらには観客も安心してレースを楽しめるようになることを祈りたいばかりだ。

さて注目のハーキュリーズクラスはというと、2019年11月には57秒843をマークし、今回も注目を集めていたパワービルダー・山根光宏選手が直前の転倒によるケガで不在。予選はNinja H2Rを駆るGarage414&WoodStockの光元康次郎選手がトップを飾り、AUTOBOY First☆Star ACTIVEの新庄雅浩選手(ZRX1200S)、Team KAGAYAMA加賀山就臣選手(刀1000R 3rd)が続く展開。決勝もその3名を中心にトップを形成したが、転倒車両がコースに残ってしまったことで一時赤旗中断となる波乱の展開となった。しかし、再開後は光元選手がすぐ抜け出してトップに躍り出てからは一人旅。ハーキュリーズクラス悲願の優勝を飾った。

こちらがハーキュリーズ出場マシン。#414のブルーに輝くNinja H2Rが今回優勝を飾った光元康次郎選手だ。ファステストラップは58秒004。もはやハーキュリーズクラスでは58秒台前半をマークしないと優勝が難しく、1分台では6位がギリギリというハイレベルな様相を呈している。それだけに非常に注目度が高い

2021テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE ハーキュリーズクラスのスターティンググリッド
2021テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE ハーキュリーズクラスのスターティンググリッド

ハイエンド化するハーキュリーズクラスだがスターティンググリッドでは和気あいあいとした雰囲気も。他クラスもノリよくカメラマンにお付き合いいただける
2021テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE 表彰台
全クラスともキチンとお立ち台が設けられ、勝者たちを観客が祝福。全員マスク姿なのはまぁ昨今の事情から仕方がないが、観客を入れての開催実施にこぎつけた関係各所の努力に敬意を表したい

カスタムの参考になる見本が猛スピードで走る舞台。ぜひ一度観戦を

GSF1200やZRX1100、Z1000、CB1300SF、FZS1000といった水冷ビッグネイキッドが活躍するFゼロクラスや、ゼファー1100やXJR1200といった空冷ビッグネイキッドが主役を張るモンスターエボリューションといったクラスは、カスタムピープルとも親和性が非常に高いクラスでもある。いずれもエンジン換装まではいかず、ベースマシンのパフォーマンスを最大限引き出すためのカスタムやチューニングがほどこされている。

ゆえに参考になるカスタムやチューニングも数多い。ストリートではそこまでのパフォーマンスが不要だとしても、その方向性や手法に関しては参考にしたいところ。ゆえにテイスト・オブ・ツクバはカスタムフリークからの注目を集め続けているのだ。単なる旧車の祭典だと思ったら大間違い。そして一般ユーザーが真似できないようなチューニングや特殊加工の塊だと思うのも間違い。それでいて全日本ロードレースに匹敵するすさまじいタイムで競われるわけだ。

せひカスタムの参考にする上でも、カスタムの方向性を考える上でも、テイスト・オブ・ツクバ参戦車両を参考にしていただきたいところだ。

こちらは日曜日に開催された各クラス参戦車両の走行写真(※全車ではない)。いずれも速く走るうえで参考にすべき点が多く、それはストリートでも有用なカスタム/チューニングでもある。また使用されたパーツだけではなく立ち上がりやコーナー進入時の車体姿勢なども参考にしてみてはいかがだろう

四ッ井 和彰

元・本誌副編集長。バイク業界歴は10数年。現地取材、撮影、原稿執筆まで一貫して一人で行なうことが多いワンマンアーミー。現在はwebカスタムピープルなどクレタ運営のバイク系ウェブサイト4誌分の記事製作を担当中



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