毎年、1月上旬に開催される四輪チューニング/カスタムの祭典『オートサロン』。毎回、カスタムピープル編集部はカスタムの参考になる要素を求めて取材に出かけてきたわけだが、今回もそのようすを少しだけお届けしよう。
遂に登場! 3年の熟成を経て生まれた二輪用ORCスリッパークラッチ
当然のことながらオートサロンは四輪系のイベント。そのためバイクの要素は皆無に近いのだが、そのなかでも本誌的に注目したいパーツがオグラクラッチの二輪用スリッパークラッチだ。
3年ほど前、メインライダーに岩崎哲朗選手、パワービルダー・針替伸明代表をチーム監督に迎えて『オグラクラッチwithパワービルダー』としてスタートしたオグラクラッチの二輪レース活動。紆余曲折あったレース活動でつちかってきたノウハウが結実し、いよいよ市販用スリッパークラッチが発売されることになったのだ。
ちなみにオグラクラッチは二輪業界ではあまり馴染みはないが、産業用・四輪レース用クラッチメーカーとしては知らない人はいないほど超有名メーカー。その同社が持つ豊富なノウハウが注ぎ込まれたスリッパークラッチであり、しかもST600クラスの実戦で揉まれただけに、その性能や耐久性は折り紙付きといえる。事実上、2社くらいしか選択肢がなかった社外クラッチの選択肢が増えるうえでも市販化となったことは歓迎したい話だ。
ボールカムにより安定した性能と調整が可能に!
少し話が逸れたが、ではそのオグラクラッチ製スリッパークラッチは何が違うのか? 端的に言えば、内部に使われているスリッパーカムがボール状になっていて、しかも市販品であればカム部の抵抗を3段階で調整可能になっている点だ。これがどういう効果を生むのか。純正のスリッパークラッチは意図的に半クラッチ状態を生みだすためスリッパーカムが用いられている。しかし純正はクサビ状になっているため摩擦抵抗が大きくなり、温度変化や潤滑状態の変化によって、実はスリップトルクが変動することもあるのだという。そこでオグラクラッチはボールカムを採用。摩擦抵抗を低減させることでスムーズで、かつ安定した性能を発揮させることができるようになっているのだという。
また、このカム部をハード・ミディアム・ソフトの3タイプにすることで、スリップトルクの強さを調整可能になっているのも同製品の大きな特長でもある。従来のクラッチのようにスプリングとワッシャーによりクラッチの強さを調整・変更わけではなく、スリップトルクのみを変更できるのだから、より走りのみに集中できるというわけだ。たとえばスリップタイム、すなわちスリッパーが効いた距離を10mだけ伸ばしたい、逆に5m短くしたい、といった場合に有効になるわけで、サーキットユーザーにとっては大きな武器になるだろう。もちろんストリートでもスリッパーを好みの効き方に調整できる利点は大きい。
またセンターハブにオイル供給用の穴を設けることでクラッチプレートへのオイル供給量を増やし、発熱を抑えつつ冷却性がアップしているとのこと。
このクラッチはパワービルダー・針替代表も絶賛しており、もっと幅広い車種への展開も期待しているとのことだが、今のところ市販化されたのはZX-6R用、そして近日発売予定なのがYZF-R6用。本誌としても今後の展開には大いに期待したいところだ。