GPZ900Rを筆頭に大排気量カワサキ車のエンジンチューニングで知られるトレーディングガレージ・ナカガワ(TGN)。その同社が2019年11月1日、設立25年を迎えた。
ショップ名にある”トレーディングガレージ”とは、同社のスタート時点で海外カスタムパーツ輸入を手がけていたことの名残り。現在ではオリジナルパーツを中心に、オイルバイパスラインDOS-RやダイレクトイグニッションシステムDIS、点火マップコントロールユニットHIRなど自社開発パーツも多数展開し、単なるカスタムショップにとどまらず、活動の幅を広げている。
なお、これまではGPZ900Rを中心としたエンジンチューニングを主軸としていたが、そのGPZ900Rも初期型にいたっては35年以上前の生産。エンジンパーツの枯渇が目立つようになり、程度自体も悪化の一途をたどっているという。そこで延命措置を図るうえでもエンジンのみを預かってのフルオーバーホールとチューニングを行なうTGNエンジンコンプリートメニューに力を入れている。これはGPZ900Rであれば920㏄、972㏄、1,050㏄、1,108㏄、1,137㏄の全5ステージで、それぞれの排気量に最適なチューニングメニューをほどこすという内容だ。この際に交換するパーツは多岐にわたり、ガスケットやシール類はほぼすべて、カムチェーンやコンロッドメタルも新品交換となる安心仕様。
また、必要に応じてクランクシャフトへのラッピング処理も実施される。従来のクランクシャフトのジャーナル部分は、わずかなキズであっても異音発生や偏摩耗につながる一方、リペアする手段がなかったため破棄することも多かったそうだ。それが新品が入手可能だったり、豊富に良質な中古車両が流通している時代ならまだよかったが、今や新品入手は絶望的。中古車両そのものの流通がほとんどなくなったうえに中古パーツの程度も悪化する一途をたどるため、四輪系メーカーとの協力を経て、Rショットと呼ばれるラッピング処理を行ない、長寿命化も図っている。
「エンジンチューニングとは調律のこと。最適な混合気を最適で確実に燃焼させ、効率よく圧縮・排出させる。それをいかにスムーズ化させるのかがチューナーの見せ所」。同社・中川和彦代表はこのように語ったことがあるが、ラッピング処理もそのスムーズ化の一環であり、スムーズになったことで必然的に従来よりパワーも上がっている。かつパワーがあるのに扱いやすさを損なわないよう、同社の探求は続いているのだ。
話題は少し変わるが、近年はキャンプブームが熱を帯びていて、車中泊なども積極的に行なわれている。そんなときに活躍するポータブル蓄電ユニット”Eパワーボックス01″を同社ではHIR製造メーカーとのタイアップで販売中。販売開始直後から日本各地では大規模災害がひん発しており、災害時の非常電源としても注目を集めているという。小型冷蔵庫(100W)なら15時間、LEDランプ(50W)なら24時間連続稼働可能とパワフルさも売り。カスタムショップという枠を飛び越え、地域に貢献できる存在にもなっているトレーディングガレージ・ナカガワ。設立25年にとどまらず、さらなる飛躍を目指している。