Z1を祖とするカワサキ空冷Zシリーズの歴史を締めくくる存在となったのが、GPz1100だ。当時のカワサキが持つすべての技術が投入されたGPz1100は120psを発揮する空冷4バルブDOHCエンジンを搭載し、最高速度240㎞/hに達する走行性能は当時の世界最速マシンだった。その空冷Zシリーズ最強最後のマシンをベースに、サンクチュアリー本店が腕を奮ったのがRCM-582こと、このGPz1100となる。
今では入手しにくくなったGPz1100だが、たまたま同社が在庫していた車両があり、その個体をベースにRCM化させることでカスタムがスタート。前後18インチで空冷Zの堂々としたシルエットを保持し、かつ当時世界最強だったスペックを現代に蘇らせるため、エンジンを含めて車体すべてを作り直すことになった。
カスタムシーンでは「空冷Zシリーズの前後18インチ化はカスタムメニューとして容易」という風潮がある。確かに18インチホイールなら純正と車体姿勢がそう変わらないので、17インチ化させるよりもホイール交換程度でカスタム範囲はすむ。それでいて軽量化したホイールの恩恵も受けやすい。しかし、それだけでは「かつてのフラッグシップモデルに現代的な走行性能を与える」というサンクチュアリー本店を旗艦店とするサンクチュアリーグループが推進するカスタムコンプリートメニュー・RCMのコンセプトからはほど遠い完成度となる。そこで足まわりを含めてイチから刷新し、現代の交通事情にあってもトップクラスの性能を発揮できる構成を作り上げた。
サンクチュアリー本店では足まわりなら自社開発のスカルプチャーを除くと、オーリンズ製ショックユニットやブレンボやサンスターといったブレーキパーツなど、世界的にも一級品と高く評価されている専門ブランドからパーツを選出している。これは一級品であればライダースキルに関係なく高い性能を発揮できることが評価されてのことでもある。とくにブレーキはライダースキルに関係なく高い制動力を発揮できるし、スキルが高まればより自在にコントロールできるようになる。こういったパーツをふんだんに注ぎ込むことで、オーナーにとって最高のマシンに乗ってもらおうという同社の思いが込められているのだ。
もちろん、これはオーナーの希望とのすり合わせがあってこそ。オーナーによって選択肢は異なるし、要・不要も存在する。Aというブランドを優先させたければ、納車が延びてもBという類似品を使わず入荷待ちをするという選択肢もあるわけだ。新型コロナ流行以後、各社ともパーツの入荷状況は悪化する一方ともいえるのだが、それでも妥協なく作り込むことをオーナーもサンクチュアリー本店も選択し、そのため完成までに時間はかかったが、それぞれ満足する内容で仕上げられることができたのだ。
カスタムポイント
カスタムパーツギャラリー
「GPz1100 by サンクチュアリー本店」の主なカスタム内容
エンジン総排気量 | 1,170㎤ |
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ピストン | ノーブレストヴォスナーφ75㎜ |
キャブレター | ヨシムラTMR-MJN |
エキゾーストシステム | ナイトロレーシング |
電装系 | ASウオタニ SPⅡ |
オイルクーラー | ナイトロレーシング |
タイヤ | ダンロップ |
ホイール | (F)PMC ソード 2.75-18 (R)PMC ソード 4.00-18 |
Fブレーキ | キャリパー:ブレンボ4ポット ローター:サンスター マスター:ブレンボ ラジアルポンプ |
Rブレーキ | キャリパー:ブレンボ2ポット ローター:サンスター |
Fフォーク | オーリンズ |
ブラケット | スカルプチャー |
Rショック | ナイトロン |
スイングアーム | スカルプチャー |
ハンドルバー | デイトナ RCMコンセプト |
ステップ | ナイトロレーシング |
フェンダーレスキット | ワンオフ |
クラッチ | マスター:ブレンボ ラジアルポンプ カバー:ナイトロレーシング |
ペイント | YFデザイン |