『空冷Zをベースにカスタムマシンを作りたい』。そう考えている人は少なくないだろうが、とくに高騰化著しい空冷Zは、おそらく今が通常の売買が成立する最後のチャンスともいえる。今後、値崩れが発生するかさらなる高騰化を招くかは予断できないが、間違いなく市場で流通しているタマ数は減少しており、遠からずショップの店頭に並ぶことがなくなるかもしれない。ゆえに古くから空冷Zカスタムで名を馳せるサンクチュアリー本店にも2019年ごろからオーダーが急増。今が最後の機会とにらみ、本気で作り込まれた”RCM”を求める人が同社に多数駆け込んでいる。今回紹介するこのZ1Rのオーナーもその一人だ。
なお、サンクチュアリー本店が展開するカスタムコンプリートマシンメニュー”RCM”とは、基本的にオーダーメイドによって車両すべてを見直し、旧車であっても現代に通用する高い走行性能を与えることを主眼に作り込まれたマシン群のこと。今では通算600台を超える数となったが、それらのほとんどはイチから仕様をオーナーと検討し、オーナーの要望によってパーツを決定。使用パーツの特性を活かした作り込みを行なっている。そこでオーナーとは相談を繰り返すことになるのだが、製作に着手する段階はもとより、最終的な仕様を決めるまでの間、オーナーのこだわりを反映させるべくメニューを何度も見直すことがめずらしくないという。もちろん、この見直しは両者ともに『今よりもいいモノを作りたい』という思いからの見直しなのだが、いいことばかりではない。見直しは作業の初期化と再工程を招くので必ず納期の延期をもたらすからだ。だが、そういう時間をかけてでもいいモノを作りたいという思いはサンクチュアリー本店にしても同様なので、結果的に納期は延びることになったが、オーナーの理想をトコトンまで追求した仕様として作り込まれることになった。
エンジンはフルオーバーホールによって完調を取り戻し、吸排気系や点火系の変更によっても十分パワフルな特性を得ている。さらにロングライフが得られるようにと11インチ13段のラウンドオイルクーラーを装着し、冷却効果を高めた。ただしノーマルの空冷Zエンジンに11インチ13段のオイルクーラーは明らかに過剰で容量を活かしきれない。そこで同社トロコイド式ハイプレッシャーオイルポンプを組み込み、大容量オイルクーラーの性能をフルに引き出している。
足まわりはというと前後17インチホイールと最新ラジアルタイヤの性能を引き出せるようにとディメンションから再構築。このあたりは同社が長年培ってきたノウハウが存分に注ぎ込まれており、ストリートからその恩恵を受けられつつ、高い走行性能を発揮可能なよう徹底的に性能が追求されている。
このような作り込みはいわゆる機能美を生み出す。機能美とは性能を追求していくと余計な装飾や無理な機能などが削ぎ落され、合理的に洗練されていくさまを表現する言葉でもあるが、サンクチュアリー本店の製作するマシンはまさにこの機能美と呼ぶにふさわしい存在として仕上げられている。カラーリングは決して派手ではないが、佇む姿は純正車両などとは一線を画する存在感。もちろん同社RCMとは、ただ機能のみを追求するだけではなくカスタムマシンとしての美しさも追求されているわけだが、それは派手なカラーリングなどで美しいと思わせるのではなく、各部のバランスでまとまりのよさを生み出している。こういった点は参考にしたいところだ。
カスタムポイント
カスタムパーツギャラリー
「Z1R by サンクチュアリー本店」の主なカスタム内容
エンジン総排気量 | 1,045㎤ |
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ピストン | ノーブレストヴォスナーφ71㎜ |
キャブレター | ヨシムラTMR-MJNφ38㎜ |
エキゾーストシステム | ナイトロレーシング |
点火系 | ASウオタニ SPⅡ |
オイルクーラー | ナイトロレーシング |
オイルポンプ | サンクチュアリーメカブランド |
タイヤ | ピレリ |
ホイール | (F)O・Zレーシング ガスRS-A 3.50-17 (R)O・Zレーシング ガスRS-A 5.50-17 |
Fブレーキ | キャリパー:ブレンボ ラジアル4ポット ローター:サンスター RCMコンセプト マスター:ブレンボ ラジアルポンプ |
Rブレーキ | キャリパー:ブレンボ2ポット ローター:サンスター マスター:ブレンボ |
Fフォーク | オーリンズ |
ブラケット | スカルプチャー |
Rショック | オーリンズ |
スイングアーム | スカルプチャー |
ハンドル | デイトナ |
ステップ | ナイトロレーシング |
シート | デイトナ RCMコンセプト |
クラッチ | マスター:ブレンボ ラジアルポンプ |