Z1といえばカワサキ空冷Zシリーズの始祖であり、今や伝説的な存在となったモデルだ。1972年製というビンテージ的な価値も高いことから年々価格は高騰化の一途をたどっているし、コレクター的な視点から欲しい、という人も少なくないはずだ。
ただし、空冷Zに“いつ”あこがれを抱いたかで、空冷Zと向き合う姿勢は異なってくると思われる。これは黎明期のカスタムシーンを支えたショップ代表たち複数からよく聞いた話だが、古くから空冷Zに乗る人たちは“古いバイクだから空冷Zに乗りたかった”わけではない。当時最先端のスポーツモデルが欲しかったから、あるいは限定解除しなければ乗れない特別な存在が欲しかったわけだ。そうして手に入れた愛車をよりよく走れるバイクに仕上げる。それが1980年代から今に至るカスタムブームの原点でもある。
サンクチュアリー本店を旗艦店とするサンクチュアリーグループが歴代フラッグシップモデルを中心に、徹底的に手を入れたコンプリートカスタムマシンRCMを製作するのは、その原点ゆえだ。それゆえ同社ではベース車が40年以上前に製造された工業製品であっても走行性能を徹底的に追求する。「古いからこの程度でもいいだろう」といった妥協は皆無だ。そこを妥協するのならカスタムはたちどころにドレスアップやデコレーションへと意味を変化させる。“カスタムする目的とは?” それに対するサンクチュアリー本店の回答は、古いモデルであっても走行性能を高めて現代的な走りを安心して楽しめるようにすることだ。もちろん副次的に見栄えのよさも意識はするだろうが、主従は逆転させず、あくまで優先すべきは性能だ。
このZ1も街乗りからロングツーリング、スポーツライディングなど、あらゆるステージで安心して乗れる状態を目指して製作された1台だ。そのために妥協のないパーツチョイスを行なう。ブレンボ製ブレーキキャリパーやサンスター製ローター、オーリンズ製前後ショックアブソーバユニット、前後17インチサイズのO・Zレーシング製アルミ鍛造ホイール、さらには自社開発したスカルプチャー製ブラケットとスイングアームで車体姿勢を適正化させている。これも現代の主流となった17インチハイグリップタイヤでハイレベルな走行性能を追求するがゆえにチョイスだ。
ただ単にバイクに着座し、法定速度以下でA地点からB地点まで移動するだけなら、もちろんこんな装備は不要だ。それは現行スポーツモデルにも共通する話でもある。210ps発揮だとかスーパーチャージドエンジンだとか誰がフルに使い切れるのか。倒立フロントフォークの真価をどれだけの人が街中で引き出せるのか。そんなことを言い出せば世の中のバイクには無意味なことだらけかもしれない。しかし、市販バイクがストリートユース前提なのにもかかわらず最高レベルの性能を日々追求しているのと同じく、サンクチュアリー本店もまた、空冷Zベースで豪華なパーツを使いつつ最高峰を目指している。そしてそれはオーナーも同じこと。最高レベルの走行性能を持つZ1を求め、それに応えるべく技術をフルに注ぎ込む。そうして生まれたのが、RCM-561とナンバリングされたこのZ1なのだ。
カスタムポイント
カスタムパーツギャラリー
「Z1 by サンクチュアリー本店」の主なカスタム内容
エンジン総排気量 | 1,045㎤ |
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ピストン | ピスタルレーシングφ71㎜ |
エキゾーストシステム | ナイトロレーシング |
キャブレター | ヨシムラTMR-MINφ38㎜ |
電装系 | ASウオタニ SPⅡ |
オイルクーラー | ナイトロレーシング |
ホイール | (F)O・Zレーシング ガスRS-A 3.50-17 (R)O・Zレーシング ガスRS-A 5.50-17 |
タイヤ | ピレリ ディアブロ |
Fブレーキ | キャリパー:ブレンボ ラジアル4ポット ローター:サンスター RCMコンセプト マスター:ブレンボ ラジアルポンプ ホース:アレグリ |
Rブレーキ | キャリパー:ブレンボ2ポット ローター:サンスター |
Fフォーク | オーリンズ |
ブラケット | スカルプチャー |
Rショック | オーリンズ |
スイングアーム | スカルプチャー |
ステップ | ナイトロレーシング |
シート | デイトナ RCMコンセプト |
クラッチ | マスター:ブレンボ ラジアルポンプ |