プロの製作したカスタムマシンは、市販化されたパーツをただ取り付けるだけではない。取り付けたパーツの性能をフルに発揮できるようにセッティングしたり、細かいフィッティングにもこだわっていて、それがひいてはマシンとしての完成度の高さに結び付いているのだ。その実例をここでは紹介する。
巨大な旗艦の秘めたる性能を高性能パーツと高い技術で引き出す
70年代後半に突如現れたホンダ・CBX(1000)。ビトーR&Dの美藤 定代表は、CBXが採用した並列6気筒空冷エンジンの伸びやトルクから高い可能性を感じていた一方、車体や足まわりなどには古さが否めず、その可能性を十分引き出せていないと考えていたという。そこで、美藤代表はそれらのネガを取り除けばCBXはすばらしい一台になるはず、と判断。そこでエンジン内部を含めて車体すべてを再構築したのだ。
貧弱な純正装備から現代的な足まわりに刷新
まず足まわりは純正φ35mmという心細くなりそうなフロントフォークをφ41mmのカートリッジ式に変更。スイングアームはアルミ角タイプとして現行タイヤのグリップ力を活かせる構成とした。ホイールは軽量・高剛性で知られるJBパワー・マグ鍛JB4で運動性をさらに強化。もちろん制動力も強化されており、φ320mmディスクローターと6ポットキャリパーを組み合わせてコントローラブルなブレーキを獲得。快適で安全なライディングが楽しめる車体を構築している。
ハイパワー化しつつも上質なフィーリングを追求
エンジン内部にも手が加えられている。ピストンはφ67mmアルミ鍛造ピストンキットにクロモリ製コンロッドを導入。そのパワーを引き出す吸排気系には同社チタン製6-1フルエキゾーストと6連タイプのFCRを組み合わせる。強化された車体と相まってエキサイティングながらもセーフティでストレスフリーな走りが得られているのだ。

カスタムパーツギャラリー
[カスタムポイント]美しい空冷6気筒エンジンは内部も全面刷新されている。1,130ccまでボアを拡大させてでモアパワーを得つつ、クロモリコンロッドでそのパワーを確実に伝達。さらに同社のスペシャルポート加工やWPC処理、二硫化モリブデンショットなどで抵抗を低減させつつ長寿命化にも貢献するメニューを取り入れ、今後長く楽しめる仕様を追求
アッパー&アンダーブラケットはJBパワー製でφ41mmフロントフォークを車体にマッチングさせている。このブラケット(フォークブリッジセット)は可変オフセット式で35mmと40mmに変更可能
シートは同社でカスタムされており、表皮をディンプルタイプに張り替えてライディング時のズレを抑制。なお張り替え時にアンコ抜き・足しを含めて同社で加工が可能(5万円〜)
ビトーR&Dといえば走行性能に非常にこだわっている一方、上質な走りを演出する高品質な削り出しパーツなどもリリースしている。このナンバープレートホルダーもその一つだ
パワーアップにともないエンジンの熱量も増加。そその熱対策として13段オイルクーラーに変更。交換時の手間を省くためホースやフィッティングパーツなどもセットになっている
6連タイプのFCRφ33mmで吸気系も強化され、パワーとレスポンスがアップ。3連ずつ内側を向く独特のレイアウトは実は純正を踏襲しており、ニーグリップ時もヒザと干渉しにくくなっている
ステップも同社オリジナル製品で、ライディング時の自由度を高めつつ車体との一体感が得られるよう15mmフォア・30mmアップのポジションとなる。タンデム用ステップキットも装着
フロントフォークはJBパワーKYBφ41mm。内部カートリッジタイプのスプリングとスペシャルチューニングが施工されるが、さらにこの車両はインナーチューブにチタンコーティングも追加
6ポット・ラジアルマウントキャリパーとφ320mm鋳鉄ローターの組み合わせで重量級のマシンも軽々とコントロール下に置く。またアクスルシャフトにはクロモリ製を採用
6-1集合式チタン製手曲げフルエキゾーストを採用し、パワーアップのみならず扱いやすさも追求。また純正18kgに対して約4kgと大幅な軽量化にも貢献。なお同社は6-2タイプも販売中
リヤショックもフロント同様にKYB製となる。減衰力調整機能が装備されていて、フロントとセットでリセッティングされており、文字どおり上質な走りが得られるよう追求されている
スイングアームは同社アルミ角タイプを採用。軽く高強度ながら硬すぎず、しなりと剛性のバランスを追求したモデルだ。ヘアライン仕上げ以外にも粉末塗装によるブラックも用意
リヤブレーキも車体をコントロールするうえで重要なポイント。同社ではφ250mm鋳鉄ローターとAPレーシング製CP2696キャリパー、ホースのリヤブレーキキットを発売中だ