前回に引き続き、マフラーに関する解説を行なう。今回はとくにアフターパーツとしてのマフラーに着目し、純正マフラーとの違いや構造、素材、さらにはメンテナンスの方法などを紹介する。
前編はこちら
軽量化が転じて生まれたマフラーを集合させるメリット
マフラーはエキゾーストパイプと集合部、サイレンサーにつながるテールパイプ、そしてサイレンサーからなる、とは前編にも書いた。このマフラーの構成で重要となるのが集合方式だ。
ヨシムラ創始者の吉村秀雄氏が採用した集合管は、もともとは4本を1本にまとめることで軽量化をねらったモノだったといわれるが、4本をまとめることで点火タイミングが異なる4気筒の場合、ある気筒で発生した排気脈動の負圧が、ほかの気筒に影響を及ぼし、その気筒が吸気タイミングであれば混合気を燃焼室内で留めるフタの役目をはたしたり、また排気タイミングであれば排ガスの排出をスムーズにしたりするなどの効果が得られ、結果としてパワーアップもはたした。この効果が知れ渡り、その後、集合管が急速に普及する。
集合管が登場したときは4本のエキゾーストパイプをまとめて1本にする4-1集合が主流だったが、一般的に4-1集合はピークパワーが上がる反面、低中回転域が弱いというデメリットも持つ。このため、のちに低中回転域から力が出やすい4-2-1集合が採用されるようになる。
現行モデルではパワーのあるビッグバイクが中心のため、純正マフラーもアフターパーツも4-2-1集合が多い。ただ、クラシックなスタイルを持つネイキッドでは4-1集合のほうが車体のデザインにマッチするため、見た目は4-1集合にして集合部に隔壁を設けて4-2-1集合にしているモノもある。しかし、これは集合部の位置や形状、そしてエキゾーストパイプの太さ、管長などによって変わるため、このあたりをどう設計するかがアフターパーツメーカーの違いとなり、腕の見せどころにもなっているのだ。
アフターパーツならではの製法も
アフターパーツメーカーのマフラーの特徴として”手曲げ”がある。これは金属パイプをバーナーで熱してパイプを手で曲げていくもので、バーナーで熱せられたパイプの焼き色や、ゆるやかな弧を描く曲線が魅力となる。一方、エキゾーストパイプを機械を使って曲げるものもあり、エキゾーストパイプが隠れてしまうカウル付きモデルでは機械曲げで作られているマフラーが多いようだ。
“フルエキゾースト”と”スリップオン”
純正マフラーをアフターパーツに変更するのはマフラー全部を交換する場合と、サイレンサー部を交換する場合があり、前者はフルエキゾースト(単に”フルエキ”と省略されるケースも多い)と呼ばれ、後者はスリップオンと呼ばれている。マフラー交換で得られる効果は軽量化やパワーアップであり、その効果はフルエキゾーストのほうが大きいが、価格も高い。対して、重量物であるサイレンサー部だけを交換することになるスリップオンはフルエキゾーストよりも安価ですむ。
アフターパーツマフラーならではの素材選定
純正マフラーの素材は、昔はスチールだったが、今はステンレスが主流となる。一方、アフターパーツは、昔はスチールやステンレス、一部はアルミなどもあったが、現在はステンレスやチタンが主流で、とくにビッグバイク用はチタンが多くなっている。チタンはステンレスに対して約6割ほどの重量で軽く、しかも錆びないのが特徴である。なお、素材の違いは音質にも影響を与える要素の一つで、旧車用のマフラーでは現在でもスチールの音質が好まれることも多い。