カスタムの疑問

自分好みの乗り味やスタイルに愛機を構築していくのがカスタムだ。自由な発想のもと、理想形に近付けていくことは、バイクライフにおける楽しみの一つでもある。しかし、いくら自由な発想といっても、押さえておかなければいけないポイントは多数ある。公道を走る以上、安全面や法規面でクリアしなければならない要素は多く、また正常に各部を機能させるためのノウハウも必要になるのだ。そこで多くのライダーが抱いているであろうカスタムに対する疑問を抽出し、その解答を探っていく。

[カスタム全般の疑問]見た目のためには整備性や安全性は犠牲になるもの、なのか?
ゼファー750にケーヒンFCRφ33㎜キャブレター採用は同社推奨の組み合わせだが、FCRはセルスイッチひとつで始動できない。そこで利便性は純正そのままにパワーアップする手段としてGPZ900R純正CVKφ34㎜を装着できるよう、インシュレーター側を段差付きで加工した

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カスタム全般の疑問
カスタムしたら使い勝手が悪くなった。これは“そういうもの”として許容すべき?
相反関係ではないので両立させることは可能です

わずかな違いも改善して安心感を高める

バグース! モーターサイクルがカスタムする際に重視するのは“安全”であることだ。どんなに見た目がカッコよかろうが、少しでも安全性を損なう状態であれば刷新する。その安全性とは走行時は当然のこととして、整備時にも同じことがいえる。

「たとえば電装類。一般ユーザーが電装類を変更・追加すると、配線がゴチャッとしたままになりがちですが、まとめられていない配線は危険です。整備時に配線に触れることが増えれば断線する恐れが増えますし、結線をしっかり行なわなければトラブルを誘発する要因になります」

「また、純正だと気にならないポイントがカスタムしたことで問題が露わになることもめずらしくありません。そこに不備を感じれば合わせてカスタムする。その不備がわずかな手間で回避できるなら、次からの作業性を考慮して変更する。それが当社の作業上のポリシーです」

同社・土屋雅史代表はそのように自社の姿勢を解説する。そのための作業は実に地味な内容の連続だが、それらにはすべて意味があり、ひいては愛車の安全性を高めることにつながっているのだ。

「ボルト類も適正なモノに変更するなどの手法は、それだけで作業時間が数秒でも短縮できたり、安全性が高まるのなら交換する意義は大いにあると考えています。『カスタムしたことで性能や見た目がよくなっても、整備性が悪化したので作業した人しか内容を把握できず、手が入れられません』では本末転倒です。一般ユーザーがカスタムした際に陥りやすい状態ですが、誰が見ても、誰が作業しても問題ない状態を作り出すのも、プロショップの仕事ではないでしょうか」

[ポイント] 基本的な調整も重視

カスタム時、意外と多いのが出荷状態の市販パーツを状態そのままに装着するケースだ。出荷状態の新品が最良の状態とは限らず、ライダーに合わせた調整が必要なパートは数多い。とくにハンドルやブレーキマスター、ステップなどポジションパーツの交換時は、必ずライダーに合わせて位置関係を調整したい。基礎的なポイントだが同社も注意して調整している。

整備性を高めるひと手間

純正のままでは分解・交換作業時に流れを阻害する可能性があったり、作業の安全性を損ねる可能性があるパートは意外と多い。また、カスタムしたことで純正状態のままだと問題化することも同様だ。そういったパートの手直しすることも地味だが重要なカスタムポイントといえる。同社ではあたり前になっているポイントでもあるが、こういった点を参考に、ぜひ愛車にも活用していただきたい。

干渉するボルトは低頭タイプに変更

なべネジをキャップボルトに変更

配線を隠しつつ干渉を避ける

実用面だけではなく全体の統一感を高めるひと手間にも注力

カスタムマシンは実用面の向上ばかりではなく、見た目の完成度や美しさも重要だ。むろん前者を阻害する要素は論外だが、整備性や安全性の向上と、見た目の完成度アップとは必ずしも相反するものではない。同社でも見た目を意識したメニューを多数採用している。その際、同社がこだわるのが統一感だ。何か一つだけ交換したとわかったり、突出した印象を与えないことを強く意識。こういった配慮がマシンの一体感を生み出す原動力となるのだ。

※本記事はカスタムピープル183号(2018年9月号)掲載記事を加筆・再構成した内容となります

取材協力バグース! モーターサイクル
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