メーターの移植や社外製への交換は本誌でもよく見られるカスタムメニューだ。その実例を紹介するとともに、変更時に注意したい点についてサンクチュアリー本店に聞いた
メーターはライディング中に必ず目が向くパートでもあるし、交換による満足度が高いのでカスタムされることが多いパートだ。今回はサンクチュアリー本店・鈴木誠太郎氏に、メーター交換の作業時の注意点を聞いてみた。
「当社で多いのは他車純正品の流用です。純正ならではの高い信頼性を得られるうえ、高年式のスポーツモデルのメーターユニットは樹脂製なので旧車に採用すれば軽量化が期待できるし、比較的安価に入手可能なのも魅力ですね」
ただし注意が必要だ。というのもタコメーターで回転数を示すのは電気信号によるが、この信号はクランク1回転ごとに1回信号を送る1パルス式と2回転で1回信号を送る2パルス式があるからだ。さらにコイル点火やダイレクトイグニッションなど車種により異なり、タコの読み取りパルスが異なると難易度は飛躍的に上昇する。電気関係に自信がない限り、年式が相当異なる車両とメーター同士の組み合わせは最初から避けたほうがいいだろう。
「当社で他社純正流用する際、1980年代車に90年代初頭のFZR1000やZXR750を採用する例が多いのも、それが理由です。しかし年式はそれほど離れていなくても、雰囲気はかなり変わります。ネイキッドはメーターカバーをそのまま流用して社外品を内部に入れることができるなど、対処しやすい部分もあります。カウルモデルはメーターレイアウトの変更時に形状に左右されにくく、自由度が高いのが利点です」
もちろん自由度は高くても、自車に対応するボルトオンパーツでもなければメーター交換とは難易度が高いカスタムの一つだ。ここでもいくつか実例を挙げているが、なかにはサンクチュアリー本店のスタッフが膨大な時間をかけて下調べをした末に配線処理を行なっているモノも含まれる。純正流用するのなら流用先・流用元のサービスマニュアルを入手して配線図を確実に理解したうえで、配線用カプラー内部の組み換えなどは必ず発生すると想定しつつ、作業にトライしていただきたい。
配線処理は『多分こっち』といった勘や雰囲気は通じないし、下手をすればショートさせて故障を誘発させかねない作業でもある。大変な作業になることはプロショップのスタッフにとっても同じことだ。しかし、メーターを純正とは違うモノにできたときには、その苦労に見合った高い満足度が得られるはずだ。
ネイキッドは純正流用+αが人気
それでは個別の話を聞いていこう。ネイキッドの場合、スタイルは極力くずしたくないがメーターに変化を持たせたいという要望が同社には多いそうで、同社が選択するのはメーターケースは純正そのままでスタック(STACK)製などの社外製を埋め込むという作業か、あるいは純正リビルドのパネルのみ変更、というパターンがほとんどだという。
「機能面の強化や追加を強く求められるというより、視覚的な変化が重要視されている印象です。そのため純正風に見えて一部だけ違う、といったパターンも実際問題として多いですね」
カウルモデルはリーズナブルな純正流用がオススメ
とくにカウルモデルではブラケット交換などを行なった際、空いたスペースを有効活用するべくメーターを刷新したいという要望が多いとのこと。この場合でもっとも多いのは完全なワンオフだが、費用削減と納期短縮を考えれば純正流用が有効と同社では指摘する。
もちろん先に挙げたようにパルス方式の違いにより、すんなり機能できないケースもある。そのため、装着する側が旧車なら流用するメーターの選択肢は1990年代前半までと考えたほうが無難だろう。それでも鉄から樹脂になることで大幅に軽量化できるし、視覚的な変化も楽しめるようになるのだ。
高年式車流用は難度大
高年式車は2パルス式の可能性が高く、かつメーターそのものもシフトインジケーター内蔵やタコ・スピード一体型など多機能化が進んだ関係から、配線そのものも複雑化している。最低でもメーターの配線を解析する必要があるし、シフトインジケーターを移植先の旧車でも機能させたいと考えた場合、そのシフト位置を何でどう感知しているのかも知る必要がある。下調べにも膨大な時間が必要で、しかも結果的に機能をフルに発揮できない場合もあると念頭に入れておきたい。
四ッ井 和彰
元・本誌副編集長。バイク業界歴は10数年。現地取材、撮影、原稿執筆まで一貫して一人で行なうことが多いワンマンアーミー。現在はwebカスタムピープルなどクレタ運営のバイク系ウェブサイト4誌分の記事製作を担当中
※本記事はカスタムピープル178号(2018年4月号)掲載記事を加筆・再構成した内容となります