近年、カスタムシーンでは64チタン合金ボルトが使われるケースが増加。そのボルトはチタンの地色だけではなく、さまざまな色が“陽極酸化処理”で生み出されている。この陽極酸化処理とは何なのか? その目的はドレスアップなのだろうか?
より安定したボルト締結をねらって処理をほどこす
チタン製のネジ類に見られる、青やグリーン、イエローのカラフルな製品。これらはアルミ製品などに用いるアルマイト処理とは異なり、陽極酸化処理という加工がほどこされている。そこで64チタン合金ボルトのパイオニアであるβチタニウムブランドのボルト・アクスルシャフトの開発・製造を手がける日本特殊螺旋工業に話を聞いてみた。陽極酸化処理とは一体何で、なぜその処理をほどこすのか?
「まずチタンはアルミや鉄と比較するとサビないといわれていますが、決してサビない金属ではありません。チタンと酸素はくっ付いてサビが発生しているのです。ただサビが形成されると常温で酸素を通さなくなり、鉄やアルミのように劣化が進行していかないだけなのです。
当社では陽極酸化処理を行なっていないボルトも販売していますが、なぜ行なうのか。もちろんカスタムバイクとして、オーナーがいろいろと好みに応じてカラーリングを選べるようにとの思いもありますが、ねらいはあくまでもネジとしての性能を向上させること。
ネジを製作するうえで切削などの加工をしていくと、ネジの表面が荒れてしまいます。その表面をならすために酸で洗浄。そのままの状態で酸化皮膜が形成されると、チタン独特のシルバーカラーになります。陽極酸化処理は、酸で洗浄した後に電解液にボルトを浸け、電気を流します。するとボルト表面に酸素が付着し、酸化皮膜を形成。シルバーの酸化皮膜と比べナノレベルで厚くなり、さらに表面が滑らかになります。これにより異種金属での電位差による劣化も抑えられ、未処理のモノよりもボルト本来の役割である〝締結〞する性能が高くなるのです。ボルトを回すだけで、その感覚の違いがわかる人も多いですね」
なお陽極酸化処理を実施したボルトに数種類の色があるのは空気の屈折率によって人の目に“違う”と映っているだけで、ボルト自体に着色しているわけではない。また、以下で紹介している全6色のなかで性能に差が生じるモノでもないとのことだ。