銃器類の塗料として用いられ、アメリカ軍の指定塗料にもなっているガンコート。表面強度を高めつつ、耐薬品・放熱性にすぐれるとされる塗料だが、同塗料を用いた施工を得意とするリアライズにその特性や利点を聞いた。
耐用性重視の軍用塗料は冷却効果と保護力を高めるマルチな特性発揮が特徴だ
ガンコート(GUN-KOTE)とはアメリカのKG社が展開している塗料のことで、もともとは銃火器用の塗料として開発された。軍用ということで耐用性が高く、とくに耐薬品性と放熱性にすぐれた性質を持つ塗料とされている。では、バイクに施工するとほかの塗料と何がどう違い、どういった利点があるのだろうか? これまでにガンコートを多数施工してきたリアライズの道岡代表に話を聞いた。
「まず施工の方法からお話ししますと、ガンコートは塗布した後、高熱で焼き付けるいわゆる焼き付け塗装になります。そのためFRPやABSでできた外装類への施工はできません。焼き付ける熱で塗膜が安定しますので、熱が不十分だとシンナーなどで簡単に塗装面がはがれます。したがって施工方法によっても性能が左右されるので、誰が塗っても一定の性能・効果が得られるというわけではないんですね」
KG社では、170度以上で1時間以上熱をかけ続けることを義務付けている(同社では1時間30分以上加熱させる)。それだけの時間をかけないと、ねらった性能や効果は得られないのだ。
「では、どんな効果が得られるのかといいますと、特徴としてはまず硬度が高く、耐薬品性と放熱性にすぐれる点ですね。耐薬品性という部分では強力な剥離剤も受け付けないですし、バッテリー液やブレーキフルードからの保護にも有効です。逆をいえば剥離させたいときにはブラストをあてるなどしなければいけないほどです。
続いての放熱性ですが、エンジンやラジエター、オイルクーラー、インタークーラーといった熱を帯びやすいパートで効果を発揮します。施工した使用者によると、エンジン温度をモニターで表示するとわかりやすいようです。四輪のインタークーラーを施工する機会も多いのですが、インタークーラーなどの場合はかなりの変化が見られるそうですよ」
そのために同社でも放熱性を重視してエンジン、あるいはラジエターなどの補器類への施工が多いという。ではそれ以外のパートへの施工は意味がないのだろうか?
「たとえばステップなどをアルマイト処理した際、部位ごとに色味が微妙に異なることもありますが、その色味をそろえるうえでは塗装でもあるガンコートは有利ですね。めっきほどの強度はないのですが、十分な硬さが得られるし、耐久性もありますから。またオイルで塗膜がはく離しない利点を活かし、スケルトンカバー内部を塗ったこともあります」
なおガンコートはカラーバリエーションが豊富なので、さまざまなパートのコーディネイトに対応しやすいのもポイント。さらに一般的な塗料と同じく配合することもできるので、先に道岡代表が挙げたような色合わせにも適しているのだ。ただし、その色によって性能は異なる。放熱性や耐薬品性を重視するなら、黒かグレーがもっとも効果的だと話す道岡代表。
「あと、ウレタンなどと異なり1液式なので手軽さがあると思います。しかしこれにも欠点があり、シンナーで薄めずに使うので、夏や冬になると生じる、温度差による乾燥時間をコントロールしにくいんです。そもそも専用の釜を所有しているかどうかで施行後の性能が大きく変わってくるので、一般のユーザーが塗料を入手できたとしても、その性能をフルに引き出すことはなかなか難しいかもしれません」
また、ガンコート固有の特性として鋳造品には塗装の浸透が早いものの、削り出しパーツには安定させにくい側面もあるとのこと。もちろん難しいだけで不可能ではないが、対象物によっては注意が必要だということも知っておくといいだろう。