人気車種別カスタムの道しるべ

カスタムを進めていくうえで、押さえておきたいポイントは多数ある。そのポイントは車種を問わない共通の内容ばかりではなく、その対象車種ならではのポイントもある。ここではカスタムベース車として人気の高いモデルをピックアップし、その車両を得意とするプロフェッショナルに、カスタムの方向性を聞いてみた。

車種別カスタム:XJR1200/1300シリーズ(パワードショップカスタマーズ)編

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完成度が高いと称されることが多いXJR1200/1300の空冷大排気量エンジンだが、構造上どうしても熱を持ちやすい。その熱が引き金になったトラブルに何度も直面してきたというパワードショップカスタマーズの谷地氏から、カスタムを進めるうえでも有効な対策を聞いた。

※ここで収録する記事は基本的に過去の本誌で紹介した記事を再編集した内容となります。あらかじめご承知おきください

XJR1300はともかく1200は熱対策がマスト

最終モデルのXJR1300は2017年まで生産されていたため、まだまだ新しいバイクというイメージが強いXJRシリーズだが、1994年にリリースされたXJR1200は生産終了から20年以上もの歳月を経ている。それだけに現存するXJR1200については経年劣化が進んだ車両が多く見られる。これまで数多くのXJRシリーズのカスタムを手がけてきたパワードショップカスタマーズ代表の谷地 勝氏によると、一番ネックになるのがエンジンパーツの劣化で、それを速めているのは熱。最大の問題はXJR系のエンジンが熱を持ちやすいことだという。

メッキシリンダーと鍛造ピストンを採用したXJR1300ではそこまで問題になることはないそうだが、XJR1200については熱が劣化部品のダメージを増長。シリンダーヘッドカバーのガスケットやシールが潰れて硬化してオイルが漏れたり、膨張と収縮を繰り返していくうちにスタッドボルトが緩むこともあるそうだ。

そのため、より効率よく冷却するシステムの導入が必要になってくるのだが、谷地氏は豊富なノウハウを駆使した独自のシステムを構築。エンジンだけでなくオイルクーラーにも放熱性にすぐれたガンコート処理をほどこしたり、オイルクーラー裏に水冷エンジン用のラジエターファンを装着している。

また、細かく言えば油温が上がりにくいエンジンオイルを採用したり、オイルエレメントをフィルター式からカートリッジ式に変更して外部に露出させることで、わずかでも油温の上昇を抑えられるようにしているのだ。

こうした対策の積み重ねによって熱の問題はある程度解消できるそうだ。

バルブクリアランスの適正化
著しくパワーが低下したXJR1200は、バルブクリアランスの適正化で調子がよくなることもあるという。比較的年式の新しいXJR1300でも、ある程度距離を走った車両では同様の効果が見られるそうだ

[ポイント①]冷却効率の向上をまず考えたい

放熱性にすぐれたメッキシリンダーと鍛造ピストンを採用したXJR1300では大幅に解消されているが、XJR1200では最大の問題といえるのがエンジンの高温&高圧化だ。同社ではその対策としてエンジンとオイルクーラーにガンコート処理をほどこすことで放熱性を向上させることが多い。場合によってはオイルクーラーの裏側にラジエター用を流用した電動ファンを装着することもあるという。空冷大排気量のXJR1200のエンジンは夏場の渋滞で低速走行を強いられると油温が100℃以上に達してしまうこともあるため、大型のオイルクーラーと高性能なオイルを用いて油温の上昇を防いで欲しいそうだ。

滑りやすいクラッチ周辺は社外品へ交換したい

XJRシリーズのエンジンについてはもう一つ問題がある。クラッチまわりの部品の弱さだ。スタータークラッチが故障してセルモーターが空回りするのは、XJRシリーズに限らず絶版車の多くに見られるトラブルだが、XJRシリーズの場合はこれに加えてクラッチが滑りやすく、クラッチレリーズまわりからフルードが漏れやすい。クラッチはエンジンがノーマルでもフルパワー仕様では滑ってしまうほどだ。

こうしたトラブルは純正部品で対策可能だが、谷地氏はこれもアフターパーツを用いて対策すると同時に強化。滑りやすいクラッチはF.C.C.製に、フルードが漏れやすいクラッチレリーズはKファクトリー製に交換することが多いという。こうすることで将来的なチューニングエンジンにも耐えうるクラッチの強さと、長距離走行でも疲れにくいクラッチワークの軽さを実現しているのだ。

[ポイント②]クラッチはノーマルエンジンでも強化したいポイントだ

別枠でも触れているようにXJRシリーズのエンジンは経年劣化にともなうクラッチまわりのトラブルが多く、クラッチの滑りについては劣化の有無に関わらず発生するという。とくにフルパワー化したり吸排気系を変更することで出力を向上した車両については滑りやすいため、こうした車両はエンジン自体がノーマルでも、できればクラッチを強化タイプに交換してほしいとのこと。

本体の通電状況も確認したいポイント

谷地氏は以前、社外製のコイルを何度かショートさせたことがあるそうだが、これはダイナモのトラブルで16Vもの高電圧が流れてしまったため。XJRシリーズの電装系トラブルはオーバーチャージになることが多いため要注意だという。

これはXJRシリーズに限った話ではないが、低年式の車両や保管状態が悪い車両はアースの接点が腐食して通電していないことがあり、アーシングで始動性がよくなったり、アイドリングが安定したりするという。ただ、とくにXJR1200では多く見られる症状のため、始動性の悪さが気になる人は、社外製コイル導入などの前に確認してほしいそうだ。

[ポイント③]強化もしたい電装系

エンジンまわりのトラブルを解消する際に、同時に強化しておきたいのがトラブルのキッカケになることが多い電装系だ。XJRシリーズも年式の古いモデルではさまざまなパーツが劣化。ダイナモが正常に作動しなくなり、オーバーチャージでショートすることもあるそうだ。

快適に乗り続けるために経年劣化にともない交換を要する部品

20年以上前に生産終了になっているXJR1200はもちろん、谷地氏いわく「保管状態が悪いモノについてはXJR1300でも経年劣化が進んだ車両も多い」という。とくに多く見られるのがインシュレーターの劣化で、あまり劣化が進行するとキャブレターの着脱時に割れてしまうこともあるそうだ。

また、基本設計の古さも多分に影響していそうな話だが、ある程度の距離を走った車両はクラッチまわりのトラブルが多く、スタータークラッチが故障したり、クラッチが滑るようになるという。クラッチレリーズ付近からフルードが漏れるというケースも多いとのこと。これらのトラブルが出先で発生すると大変なため、できればマメにチェックし、早めに部品を交換しておくべきだろう。

取材協力パワードショップカスタマーズ
住所茨城県那珂市後台3038-1
TEL029-295-8836
URLhttp://poweredshopcustomers.wixsite.com/poweredshopcustomers


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