カスタムシーンで人気のZRXシリーズ。高年式ビッグネイキッドとして確固たる地位を築いたこのマシンをどうカスタムするのが今、ユーザーに受け入れられているのだろうか? トレーディングガレージ・ナカガワの見解を聞く。
この記事の目次
※ここで収録する記事は基本的に過去の本誌で紹介した記事を再編集した内容となります。あらかじめご承知おきください
専用パーツなのに乗りにくい!? その原因は未セッティングのままだから
「ZRXシリーズ対応のボルトオンパーツを装着したことで原因を招き、不調になっているケースが多いですね。ひと目見て『ああ、これは確かに乗りづらいかも』と思えるマシンも多いですよ」
ZRXシリーズを扱っていてよく目にする現状について、トレーディングガレージナカガワの中川和彦代表に話を聞いたところ、このような発言が冒頭に飛び出した。これに疑問を感じる人も多いだろう。
なぜZRXシリーズ対応のボルトオンパーツを装着したのに不調になるのか? それを中川代表は次のように説明する。
「ボルトオンパーツというのは純正車両に無加工で取り付けることができますよ、という意味です。つまり、それが装着できたからといって無条件に性能がよくなったり、扱いやすくなるというわけではないんです。電装類など取り付けるだけで性能が向上する製品もありますが、とりわけ機能パーツ、ブレーキやサスペンションまわり、そしてエンジン関係のパーツは注意が必要ですね」
たとえば社外キャブレター。キャブレターは車種専用と書かれていても、あらゆる社外マフラー、そしてあらゆる車体の状態を想定したセッティングを出荷状態で完了しているわけではない。また、ブレーキを強化すれば、その強化したブレーキによる挙動変化に対応できるようサスペンションを調整する必要も生じる。
性能面を直接左右するパートに限らず、ステップやハンドルにしても、オーナーごとに体格や乗り方、好みに合わせて調整しなければ、ただ乗りづらいバイクになってしまうのだ。
「パーツの有無を問わず、オーナーの思ったようにバイクが加速し、オーナーが思い描いた位置で減速してコーナーに進入して、思ったポイントで安心してアクセルを開けていける。これがバイクにとっての理想ですし、カスタムしたことでそれらの動作を行なうのがより楽しくなるようにセッティングするのが我々の仕事だと自負しています。
そのため、パーツを装着後にはそれに対して適正なセッティングを行なう。そうすれば、高性能な社外パーツはその真価を発揮してくれるでしょう。社外パーツが悪いのではなく、その性能を完全に引き出せない状態で走っていることが問題だと思います。
ZRXシリーズはカスタムパーツが豊富なので、多少の知識があればDIYでカスタムが楽しめる反面、キッチリとセッティングの重要性を指摘してくれるショップが少ないように感じます。不調を感じるようであれば、セッティングのノウハウがあるショップに相談してみるといいでしょう」
まず乗りやすい状態を作り上げるのがカスタムショップの役割だ、と中川代表は強調する。
ZRXシリーズは構造が弱い!?
ZRXシリーズは最新のZRX1200ダエグが2016年まで現役だったこともあって、印象としてはかなり新しいモデルと思いがちだ。しかし、新しくてもフレームは伝統的なダブルクレードルで、フレーム鋼管の肉厚が他車より特別厚いわけでもない。さらにツインショックも採用するのでリヤ剛性も決して高いとはいい難い。1980年代初頭に設計されたダイヤモンドフレームとモノショックを採用するGPZ900Rと比べても、構造上どうしても劣勢なのだ。またZRX1200Rは車体右側アンダーチューブが分割式なので、さらに弱い部分が生まれている。そのためフレームへの補強や剛性の高い社外スイングアームといった手法が非常に効果的と中川氏は語る。とくにスポーツ志向を高めるなら検討したい。
乗りやすくするにはまず剛性アップがオススメ
では、ZRXシリーズの場合、何から手を付けると乗りやすくなるのか? 同社がまずお勧めするのはフレーム強化だ。
「とくにZRX1200Rはアンダーチューブがエンジンを着脱させやすいよう別体式になっているので、どうしても強度的に弱くなっています。クロモリ製などに交換するとフレーム全体の強度が増し、剛性感もアップします。
そしてもうひとつ。ビキニカウルのフレームマウント化を行なえば、乗りやすさを劇的に改善してくれます。とくに高速道路で原因不明のフレに悩まされている方は検討していただきたいですね」
純正ビキニカウルはハンドルマウントなので、高速巡航時などの走行風の影響を受けやすい。フレが生じる場合、多くの場合、このビキニカウルのフレームマウント化とアンダーチューブの交換によって車体はかなり安定するという。
「それに加え、ツインショックのためリヤまわりの剛性も高いとはいえませんから、スイングアームを剛性の高いモノにするといいでしょう。こういったメニューをまず取り入れてみることを推奨しています。
まずそういった基本骨格を固め、それからさまざまな手法を検討してみるといいでしょう。幸いにもカスタムパーツもカスタムの方向性も多種多様です。あれもこれも、とパーツを装着する前に、まずプロに相談し、要・不要を見極めつつオーナーにアジャストすることを重視してから、いろいろと手を付けたいですよね」
ZRXカスタムのポイント
①電装カスタムはZRXシリーズには有効
同社では積極的にパフォーマンスアップを目的とした電装系パーツを開発しており、代表作のHIRやDISがカスタムシーンでも人気だ。点火系の最適化を図れば出力特性も向上するので、ハイパフォーマンス化の第一歩として取り入れるのもアリだろう。
②意外!?にハンドルはセパレートが高評価
同社を中心に増えているのがセパレートハンドル。Kファクトリー製を使っているが、GPZ900Rでも採用例が多く、ストリートで疲れにくく、サーキット走行でも荷重をかけやすく、かつしっかりと抑えがきくと中川代表は高く評価している。
③冷却効果も高めたい
ZRXシリーズは半ばドレスアップとしてビックラジエター化が定番視されているが、水温は油温とイコールではないので、油温を低下させるオイルクーラーの追加を同社ではお勧めしている。とくに渋滞が多い都市部に住んでいる人はエンジン保護にも効果が大だとか。
④外装カスタムで個性をアピール
カスタムシーンで人気のZRXシリーズは純正外装のままだと意外と没個性的になりかねない。そこで同社ユーザーも派手な外装を採用している。オーナーの個性を最大限反映できるパートでもあり、凝ったバリエーションが増えてきているそうだ。