メンテナンスのススメ

カスタムすることで性能を向上させる。それがカスタムする楽しみの一つでもあるが、それも正常な状態あってこそ。そして正常な状態を維持するには、純正のままでもカスタムした状態でも、各部のメンテナンスは必要なのだ。そこで性能を引き出すうえで注目したいメンテナンスポイントを挙げていこう

増し締めのススメ。いつしか緩むボルト類は定期的な確認が必要だ

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ボルトがいつの間にか緩んでいた、という経験を持つライダーも少なくないだろう。その際には増し締めして適正な締結トルクを維持する必要があるのは言うまでもない。ではボルトの緩みの原因と対処法とは何か。

ボルト類の緩みが生じるのは張力と反発力が適正な状態ではないから。ゆえにトルク管理が重要だ

増し締めについて解説する前に、まずボルトがどのようにパーツを固定しているのかを知っておきたい。ボルトは締め付けられて伸びることにより張力、いわばバネのような作用を発生する。そして対するパーツは反発力を持つ。この双方の力が拮抗することでパーツは固定されるのである。

そのため、ボルトもパーツも弾性体でなければならない。つまり、まったく変形しない強固な物体同士では、締結することはできないのである。

そして当然だが、ボルトの締結はマニュアルの規定値に従う必要がある。トルクが足りなければボルトやパーツに十分な張力、反発力を与えられないし、逆にオーバートルクになってしまえば、それらの破損を引き起こしてしまうからだ。

そもそも、メーカー出荷状態であれば、各パーツの締め付けトルクなどはしっかりと管理されているので、最初からボルトが緩んでしまうようなケースはまれだ。しかし、カスタムすることによってパーツを交換したようなバイクの場合は話が別。あらためてボルトの管理をしっかりと行ないたい。

ボルトが緩む理由は締結力の弱化や熱膨張など多岐に渡る

ボルトが緩む理由としては、まずは初期緩みが考えられる。ボルトの座面とパーツの間の凹凸がつぶれることで締結力が弱くなってしまうと、増し締めが必要になるのだ。

この場合、パーツがボルトよりも軟らかく、締め込むことで座面が陥没してしまうというケースもある。こちらもやはり増し締めを行なわなければならないが、フランジ付きのナットやワッシャーなどを用いることで緩みを防止することができる。

それ以外にも、マフラーやシリンダーヘッドなどのガスケットがヘタることで緩みが発生することもある。また、高温になる箇所もボルトとパーツの熱膨張の差によって緩みが発生することも。ステップバーなど可動部分など注意したいポイントだ。

用途や場所ごとにロック剤やワッシャーを使い分ける

パーツの緩みを防止する対策としてはネジロック剤の塗布やダブルナット、ツメ付きワッシャーの利用などがあり、重要な箇所ならワイヤリングなども有効だ。

この緩み防止としてはネジロック剤一択ではなく、ほどこす箇所はサービスマニュアルに従うべきだ。それに、ネジロックには強度があり、たとえばブレーキローターなどは通常のタイプを使用するが、エンジン内部など緩める機会が少ないような箇所は高強度タイプを使用することも多い。マフラーなどの高熱にさらされる箇所などにはカジり防止グリスを使うといった使い分けも重要になる。

走行前点検を徹底し、走行後も各部のチェックを欠かさないようにしておけば、ボルトの緩みによるパーツの脱落、そしてその結果としての転倒といったアクシデントを回避することができる。それには日頃から工具を(ボルトに)あてる習慣をつけておくといいだろう。ただ、メガネレンチは意外と大きな力がかかってしまうので、オーバートルクを回避しやすい片口のスパナを使用したい。

緩みやすい箇所は日常的にチェックしよう

ここでは、緩みが発生しやすい代表的な箇所と対策を解説する。ただし、ここで挙げた場所以外は決して緩まないというわけではない。ボルトで締結される箇所はその時期こそ異なるものの、必ず緩むと考えるべきで、つね日頃から各部のチェックを欠かさないようにして、トラブルを未然に防ごう。

ボルトが緩む原因と対策を考える

ボルトの緩みの原因としては、本文中に挙げたような初期緩みのほかにも熱による緩みやワッシャーの変形といった理由が挙げられる。そのため著しく変形したワッシャーは新品に交換するのが望ましい。銅ワッシャーなら再利用は不可で、毎回新品を使用すること。ネジロック剤を塗布して緩みを防止するのも有効な手段だ。

緩み以外にもチェックしたいカジリなどの固着

普段からボルト類のチェックを行なうことの一環として増し締めを行ないたいが、その際には緩んでいるだけではなく、逆に固くて緩まない状態になっていることもあるだろう。では、そんな状態にならないようにする方法とは?

固着の予防

ボルトを締め付ける際にネジ山の表面に摩擦熱が発生し、その熱によりボルトやナットが固着してしまうことがある。これをカジりというが、カジりが発生した場合に無理にボルトを外そうとするとネジ山を破損してしまうことがある。しかし締結時に焼き付き防止グリスを使っておけばネジの固着を防げて、外す際も無駄な力は必要なくなる。

増し締めのススメ 焼き付き防止グリス
増し締めのススメ 焼き付き防止グリス

ボルトに塗布する際だが、筆を使うと無駄なく均一に塗布することができる。しかし塗付すると滑りやすくもなるため、締め込む際のオーバートルクには注意しよう

固着への対策

金属同士の素材が異なっていたり、熱が加わっていたりするような箇所はボルトの錆び付きなどが考えられる。ステンレス製のボルトをアルミパーツに用いて電蝕=固着させてしまうというケースもあるだろう。そうなると、無理に外そうとするとボルトやネジの頭をナメてしまう。固着したボルトを外すには浸透性の高い潤滑剤の使用やハンマーなどで頭を叩くなどの方法があるが、それでもダメな場合は熱を加えたり、ドリルで頭を落としたりしなければならない。外す手間もかかればショップに対応を依頼すればかなりの工賃が発生してしまうことになりかねないので、異素材同士の結合はもちろん、熱を帯びるパート、錆びる可能性があるパートには日頃から各部をチェックしたい。

対策として有効な工具とは

規定トルクを守らなければ緩みはもちろん、そのパーツの性能も十分発揮されない。自分でカスタムやメンテナンスを行なう人なら、やはりトルクレンチは持っておきたい。使用箇所やパーツサイズなどに合わせて複数のタイプのトルクレンチがあれば万全だ。普段からトルクレンチに慣れていればトルクの感覚を覚えられるので、出先などでトルクレンチを持っていないときの管理も比較的容易になる。

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