操作性をも左右するグリップだけに違いは大きい
ハンドルの両端に配置されていて、スロットルと直結するグリップ。バイクのハンドルには路面の状況や車体の振動を伝わるものだが、振動や衝撃は疲労を蓄積させやすい。そこでグリップにはそういった衝撃や振動を吸収する役割もはたしている。
そもそもの話、グリップとは永続的に使えるパーツではない。多くがゴム製なのでグローブとの干渉で摩耗していくし、紫外線などで硬化するためだ。交換サイクルは長いものの消耗品という位置付けでもある。そのためカスタムに限らず、長く乗り続ければいつかは交換が必要になる。
ただ、市販されているグリップの数は膨大だ。純正同様のゴム製だけではなく金属製もあるし、形状だって真円タイプから楕円形、はたまたガングリップみたいな形状もある。ではどんな観点からグリップは選ぶべきなのだろうか?
まず、グリップが細くなると振動を手に伝えやすくなるが、太くなれば振動を吸収して伝えにくくなる。となると振動を伝えない=疲労低減を主眼とするなら太いほうが有利ともいえる。アクセルワークも太いほどわずかな操作で大きく反応してくれるようになるので、ツーリングユースであれば太いほうがアクセルワークでの疲労低減につながりやすくなる。しかし、太くなればなるほど路面やタイヤからの情報までも伝わりにくくなる。さらに、手が小さい人や女性だとレバー操作がしにくくなるといったデメリットも存在する。ゆえに一概に“グリップは太いほうがいい”と断言はできない。こればかりは個人差がある話でもあるので、少なくともレバー操作を阻害しないことを大前提として選びたいところだ。
なお、グリップには流行り廃りもあり、少し前は細身のグリップが流行していた。古いカスタムファンなら“TZグリップ”という名称を聞いたことがあるだろう。ただ、現在はテーパー形状が人気だ。たとえばアクティブのエラストマーグリップや、キジマのドクターグリップ、ロッシグリップとして知られるホンダ純正グリップがそれに該当する。
TZグリップとは、ヤマハの市販レーサーTZ250に純正採用されていたグリップのことで、レース用ということもあって薄く、路面やタイヤの状況を把握しやすいといった特徴があった。そのため走りを楽しむ人たちに好まれる傾向が強かった。
テーパー形状のモノはというと、MotoGPライダーのバレンティーノ・ロッシ選手がホンダ車を駆っていたときにホンダ純正グリップを気に入り、その後、他チームに移籍してもホンダのグリップを使用したことにより”ロッシグリップ”として広く認知されるようになったモノだ。テーパー形状ということはグリップ内側が細く、エンドに向かって太くなる形状となるが、太い部分で手のひらで押さえつつ、細い部分を指先で操作するので繊細なアクセルコントロールが可能となっているのが特徴だ。
テーパー形状は使い始めはそれまでのグリップとはかなり使用感が変わるので違和感をあるかもしれないが、ロッシが使用するグリップと同タイプであること、適度な太さなので疲れにくいといった評価で人気を博している。なおエラストマーやドクターグリップはそれぞれ材質が異なるので、一度触れてみることをできるだけ推奨したい。
グリップの材質選びは好みを優先してもいい
材質の話が出てきたが、グリップの材質には金属や硬質ゴム、柔らかいスポンジラバーといった具合にさまざまな種類の素材が用いられている。モノによっては複数の素材を複合的に用いることだってあるが、ではそのなかで何が優秀というか、お勧め的なモノがあるのだろうか?
実際問題として、どれが自分にフィットするかは個々の好みや使用するシチュエーションで大きく変わってしまう。たとえば、柔らかいスポンジラバーは衝撃吸収性にすぐれ、たとえば振動が大きいハーレーダビッドソンのカスタムマシンで使われるケースもある。しかしグリップとはつねに力強く握られるため、柔らかすぎれば摩耗が進行しやすいという欠点もある。では硬い金属製を用いれば確かに摩耗はしにくくなるが、今度は衝撃吸収性がゴムなどより劣るので、疲労が蓄積しやすくなることだって増えるだろう。さらにいえば、冬季にはグリップから指先に冷たさが伝わってくることだって考えられる。
製品によっては硬質なゴムと柔らかいゴムとを組み合わせているモノもあるが、それぞれどのようなねらいでその組み合わせを行なっているのか、製品の解説なども熟読したいところだ。そのうえで、自分がどんなシチュエーションでバイクを運用するのか、どんなシチュエーションでグリップに不満を感じるのかも考慮して、最適なグリップを選んでいただきたい。
振動対策としてのグリップ選びならインナーウエイトも考慮したい
グリップが薄くて、あるいは硬すぎて振動が伝わるから交換したい、というのなら、ハンドルバーエンドにインナーウエイトを追加することも検討してみよう。とくにセパレートハンドル化させたマシンだとフロントフォークと直結している関係からか、振動が伝わりやすくなることが多い。その振動を抑えるうえでインナーウエイトの採用は有効になる。グリップを分厚く、かつ柔らかくしたのに振動が収まらないという人にもお勧めだ。