法規制はカスタムにとって性能低下を持たせす悪なのか? それは誤解だ
社外マフラーに関して非常に多い誤解の一つが、法規制による性能低下だ。排気ガス規制や年々厳しくなる排気騒音規制の存在により、昔ほどのパワーアップが期待できなくなっている、といった声は非常によく聞く話だ。では、それは正しいのだろうか?
今回は例としてゼファー1100を挙げてみよう。ゼファー1100は1992年から2003年まで生産されていたが、2002年には排気ガス規制、2003年は騒音規制がそれぞれ強化されている。ゆえに社外マフラーも法規制強化前と後の年式や型式で区分されることがあり、「“ゼファー1100”とひと言でいっても年式によっては法規制が厳しくなるので、適合年式によっては車検適合にならないこともある。マフラー選択には注意」などと本誌で書かれることもあった。しかし、たとえばアールズ・ギアのゼファー1100用ワイバンマフラーは1種類しかないが、適合車種が初年度〜02年までのZRT10Aと、最終型で騒音規制の強化に適合したBC-ZRT10Aが併記されている。これは法規制をクリアしつつ、法規制前と同じ性能を維持できることを意味するわけだ。
また、マフラーメーカーはそういった排ガス規制や騒音規制に適合させつつ、対策として用いられている触媒などの存在を前提に性能を追求している。本来は触媒の取り外しが禁止されているものの、たまに「触媒は抵抗にしかならない」と考えて取り外す人もいるそうだが、そもそもマフラーにとって抵抗とはつねに悪とは限らない。マフラーとはただ排気ガスが抵抗なく抜けるようにすればいいわけではないのだ。ゆえに触媒を取り外した結果、取り外す前より性能が悪化することもあり得るのである。
法規制をカスタムの自由度を阻害する要因と見なす人はまだまだ多いが、法規制があってもマフラー交換は行なえるよう各マフラーメーカーは努力しているし、法規制の存在により純正状態のバイクの性能がかつてよりガタ落ちしているわけでもない。今より規制が緩かった1990年代には145〜147ps程度だった最高出力は、今ではカワサキ・ニンジャH2やホンダ・CBR1000RR-R、ドゥカティ・パニガーレV4、アプリリア・RSV4 Rなど、最高200psを超えるマシンが少なからず存在するほどだ。高年式車に社外マフラーを装着すると性能がガタ落ちしているならともかくも、そうではないことはみなさんよくご承知のはず。ゆえに法規制をわざわざ逃れようとしなくても、マフラーカスタムは楽しめるのだ。
四ッ井 和彰
元・本誌副編集長。バイク業界歴は10数年。現地取材、撮影、原稿執筆まで一貫して一人で行なうことが多いワンマンアーミー。現在はwebカスタムピープルなどクレタ運営のバイク系ウェブサイト4誌分の記事製作を担当中