モノ単体としての明るさと照射装置の範囲内の明るさとは別
ヘッドライトバルブ選びの際、よく社外メーカーはルーメンという言葉を使って明るさをアピールしている。「4,000ルーメンで明るさはハロゲンの倍」といった具合だ。なので何となくルーメンの数値が大きいほどヘッドライトバルブとしての性能がすぐれていると認識している人も多いだろう。
ではそれが正解なのか? その答えを出す前に、まずライトの性能を示す言葉としてルーメンのほかにカンデラ、ルクスという言葉があることから触れていこう。
まず先ほどから挙げているルーメンから説明しよう。このルーメンとはlmとも記載されるが、発光体が持つ明るさの量のこと。つまりヘッドライトでいえばバルブ単体の発光量がいくらという指数だ。
続いてカンデラ。これはヘッドライトやプロジェクターなどの照射装置が照らす範囲内の明るさの強さのこと。こちらはcdと記述される。ただし、こちらがLEDやHIDといった社外製ヘッドライトバルブの説明に掲載されることは少ないので、意外と目にする機会は少ないかしれない。理由は後述する。
そしてルクス。これは照射された面の明るさを示すもの。こちらはluxまたはlxと記述される。こちらもカンデラ同様に使用されることが少ない。
ほかにケルビン(K)という言葉も聞いたことがあるだろうが、これは発光体の明るさを示す単位ではなく、色温度のこと。高いと青白くなり、低いと黄色味を帯びる光となるが、この解説は別機会にゆずるとする。
ではこのルーメン、カンデラ、ルクスのうち、何がバイク用ヘッドライトバルブにとって重要なのか? 実はカンデラが最重要だ。バイク用ヘッドライトとしての要目は、1万5,000cd以上であることが求められる(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示〈第一節〉第42条(前照灯等)3)。車検適合を考慮するなら、1万5,000cd以上の明るさを保持したヘッドライトバルブであることが何よりも重要になる。
だが、このカンデラを安モノLEDヘッドライトバルブが明示することはほとんどない。なぜか? このカンデラはライト専門メーカーでもないと計測することが非常に難しいから。これはルクスも同様で、ゆえに表示されることがまれである、という話をライト専門メーカーで聞いたことがある。一方でルーメンは計測方法は比較的容易。場合によってはスマホアプリでも計測可能だ。
また、このカンデラはルーメンとは比例しない。ルーメンが比較的低い数値でもカンデラをある程度高くすることはできるのだという。これは逆のこともいえるので、ルーメンが高くてもカンデラが低いこともあり得る。ルーメンはヘッドライトの明るさの一つの目安にはなるが、ヘッドライトとしての明るさのすべてを示すモノではないのである。
ヘッドライトにとって何よりも重要なのは“明るいヘッドライト”であることだ。明るい電球を使っても、それがしっかりとした配光を得て明るいヘッドライトになるのかは話が別。もちろん最初から暗い電球では意味がないが、明るい電球と明るいヘッドライトが実はイコールではないことも知っておこう。