吸気系カスタムの疑問
- キャブレターのブランドやメーカーで何が違うの?
- それぞれ傾向と特徴が違います
この記事の目次
2大キャブレターはケーヒンFCRとミクニTMR
ピークパワーかレスポンスか、その違いで設計や特性も違うFCRとTMR
いわゆる強制開閉式のキャブレターはこれまでにもさまざまなモデルが登場してきた。少し聞きかじっていればレクトロンやブルーマグナム、アマルやデロルト、ソレックスという名前も聞いたことがあるだろうが、現在、一般的に入手しやすいのがケーヒンFCRとミクニTMRだ。それ以外にもケーヒンCRやミクニTMが多く使われた時代もあるが、性能的にはCRの進化版がFCR、TMの進化版にあたるのがTMRであり、後者の進化版のほうが性能は当然ながら上となる。
今回は現在アフターマーケットで主流のFCRとTMRを中心に取り上げるが、このどちらも強制開閉式のキャブレターとなるものの、メーカーが異なるため開発コンセプトは当然異なり、内部構造も違う。では何がどう違うのだろうか。
高回転重視か低中速のツキか、その考え方の違いが作りの違い
キャブレターの話だけで本が一冊作れてしまうほどの内容なので、ここでは概略だけにさせていただくが、80年代初頭に当時ダートトラックで名を馳せていた“キング”ケニー・ロバーツの要望でミクニがTMキャブレターを開発。TMキャブレターは、負圧がかかりやすくセッティングが容易で扱いやすいフラットバルブを採用して、とりわけアメリカのダートトラッカーなどで人気を博していた。しかし、負圧がかかりやすいということはスロットルバルブを動かす動作の阻害にもなり得るということ。TMはアクセルが張り付いてアクセルの戻りが悪い、などともいわれたが、それは構造が理由でもあったのだ。
対してCRは抵抗が極力発生しないスムーズボアを追求するためもあり、円柱型のスロットルバルブを採用していた。この円柱型のバルブは負圧がかかりにくいため、全開時はパワーを得やすいという特性を発揮するものの、低中回転域でのレスポンスでフラットバルブより一歩ゆずったのは否めなかった。
この両者が人気を博すなか、ケーヒンはCRの後継モデルFCRを開発。製品名どおりのフラットバルブCRとしてフラットバルブを採用したほか、スロットルバルブをローラーベアリングを用いたうえで斜めに配置することで負圧をニードル部分に集中。負圧により霧化を促進させつつベアリングで摺動抵抗を低減させ、フラットバルブの弱点である張り付きを改善している。
続いて登場したTMRはスロットルバルブの動作部にボールベアリングを採用してスムーズな動きを得られるようにしたほか、セッティングしやすいプランジャー式加速ポンプやVシールを用いることで低中回転域での扱いやすさを強化。さらに吸気圧力を効率よく霧化するハイパーノズルを採用するなどの熟成と改良を加えている。
ケーヒン CRキャブレター
ケーヒン FCRキャブレター
ミクニ TMRキャブレター
使いたい領域で異なる選択肢
こういった設計上の違いは特性としても違いとして表れている。すでにところどころで触れているが、FCRはエンジンへの混合気の吸入流速や、吸入負圧が高いときにパワーが出やすい構造となっている。簡単にいうと高回転域でその本領を発揮させやすい。
一方のTMRは低中回転域でもガソリンの霧化特性にすぐれており、低中速からトルクを活かして走らせるタイプといえる。
なお、イメージとしては『高回転型のほうが最高出力は上になるはずだし、最高出力が1psでも高くなるほうが優秀である』というイメージもあるだろうが、実際はそう簡単な話ではない。選択する口径でも変わってくるし、マフラーや点火系カスタムパーツの有無や選択でも変わってくることがめずらしくないのだ。おおまかな傾向として、おおよそ高回転域を得意とするFCR/CR、低中回転域を得意とするTMR/TMという分類で考えて、どちらを採用するか検討していただきたい。